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執筆者の写真滝脇 憲浩

信越五岳2023 100マイル 後編

更新日:2023年10月19日


完全に晴天、そして猛暑。

これヤバくない?を何度も繰り返す。


でも人のやさしさに触れる。民家の方がシャワーを用意して待ってくれてる。

キレイなお姉さん二人が水鉄砲で打って応援してくれる。

私設エイド団の方々がしそジュース、氷水を用意してくれてる。

これ全部、地元の方が選手のためを思って自発的にやってくれてるらしい。

あんなクッソ暑い中できることじゃない。本当に尊敬。人間って捨てたもんじゃない。

あの方々のに幸あれ!


レースに戻ると猛暑の連続。

常に熱中症と隣り合わせ。そして追い込まれて遂に逆転の発想が生まれる。

濃い青色のウィンドブレーカを頭に羽織ると、日光をメッチャ防げると判明した。

ムシムシするが、日光を直浴びするより全然マシ。

これで息を吹き返す。恰好は悪いがそんなの気にしない。


そんなこんなで黒姫エイド到着。

ここにくるまで激坂あったり、滑落しやすい危険個所あったりでツラかったのは当然。

ここまで履いていたホカオネオネのシューズが微妙に足に合わず、足の中指に痛みが発生。念のためドロップバッグにアルトラ入れといて良かった~

これはマジでファインプレー、自画自賛。

身体中にワセリンを塗り直して出発。


「~112km(笹ヶ峰グリーンハウス)」

実は、この区間の途中の記憶が全くないのです。

走った?っていうくらい記憶がないのです。

終盤のちょっとした激坂を上り下りしてる最中に、可愛らしい女性とお話した+少し前を登っていた男性が蜂に刺されたくらいから記憶があるのだが、とにかく語れる記憶がない。

メチャクチャ眠かったのかな?


このエイドでカレーを食べてたら、さっきまでの天気とは打って変わって土砂降り。

雷も中々で、いよいよ面白くなってきた。


「~122km(西登山道入り口)」

雨ザーザーの中出発。

足は完全にビチャビチャ。最初は水たまりを避けて走ってたけど、避けることで体力を消耗してしまうので、水たまりはないと思い込んで走る。

足首まで浸かるのもザラだったけど、結果的にこの決断が功を奏した。

水たまりを気にしながら走っている人達を横目に爆走。

山中では大分遅れを取り戻せた。


そしてエイド直前の微妙な登坂。

ここで一旦力尽きる。

ちょっと走ってまた歩くの繰り返し。自分、あーいった微妙な登坂が一番苦手かも。


余談ですが、笹ヶ峰にとても過ごしやすそうなキャンプ場があった。

今度行ってみようかな。


「~128km(大橋林道林道)」

黒姫山の中腹まで登るコース。

アタック開始前に、大会の方から大雨の影響で、登山道がぐちゃぐちゃ+川が出現して滑落の危険アリなので気を付けてと言われる。

中止にならないんだ。と思いながら出発。


言われた通りになってた。

いくつも川が出現。それほど危険は感じなかったが、まあ足を滑らせたら滑落事故やな~って感じ。それよりも何人も通った後なので、とにかく泥が酷かった。

足首まで沈む箇所もあってキツかった。

もうすでに辺りは真っ暗。ライトの明かりを頼りに登る。


ここで大渋滞発生。30人くらいのトレインになってた。

しばらくその列車に乗っていたけど、このままだと後々ヤバい気がしたので、無理やり列車から降りて一人で登りを開始。結果、この決断が正しかった。

足は大分回復してたので、あっという間にトレインを引き離しこの区間の最高到達点まで。

下りも足元の水たまりを気にせず爆走。

あのまま列車に乗っていたら、多分完走できなかった気がする。


エイドまでのラスト2km、ペーサーを連れた方と並走。

平坦な林道なんだけど、一定間隔で山水を下に流す側溝があった。

自分は一人なのでライトを頼りに側溝を気にしながら走る。

だけどペーサーを連れた方は、ペーサーに前を走ってもらって、側溝の有り無しを伝えてもらっていた。こっちは眠気もあって目の前の道に集中できず、危ないタイミングもあった。

ペーサーっていいな~とメッチャ思った。

でもトレラン友達いないから、自分には一生ペーサーはいないんだなって思ってちょびっと悲しくなった。



「~141km(戸隠スキー場)」

エイドを出てから牧場をしばらく走行。

当然だけど、牧場は牛が逃げ出さないように有刺鉄線の網が張ってあり、その横を走る。

辺りは真っ暗。ライトを消すとマジで何も見えない。

どうやら天気は良いようで、星はキレイ。


ふと牧場側にライトを当てると、暗闇に得体の知れないデカい生き物。そう、牛が網ギリギリにいるのだ。とても広い牧場なのに、網ギリギリにいた。

要は、目の前にいきなり牛の頭がヌッと現れる。

辺りは牛と自分だけ。究極にビビッて、思わず「はひゃっ」という叫び声が出た。

周りに他のランナーいなくてよかった。

牛のヌッと出に慣れず、それから2,3回「はひゃっ」と叫んだ。

夜の牛は怖い。


この区間、結構前後のランナーと離れていて、自分一人だけ走っている時間が長かった。辺り真っ暗で静まり返っていたので怖かった。

このタイミングで”クマ注意”の看板が現れると恐怖感が増す。

小さい鳥居が20個くらい連続した箇所もあって、それも更に恐怖をプラスした。


恐怖から逃げるように走れたので、次のエイドまではあっという間の感じだった。


最後の関門の戸隠スキー場、タイムアウトの1時間前に到着。

あとはゴールまで頑張るだけ。


「~151km(瑠璃山山頂経由、飯綱林道入口)」

最後の山場、1748mまで一気に登る。

ここでハプニング発生。焦っていたのか、眠気から来る集中力の欠如なのか分からないが、水の補給を中途半端にしてしまった。

エイドを出て1km地点で気づいた。もう戻れない。

最大1000mlの水を持てる用意をしていたのだが、700mlくらいしか持たずに出発してしまった。

この300ml、レースになると致命的。

激坂を登り始めると、一気に汗が吹き出す。

メッチャ水飲みたい。

だけど水の枯渇が心配過ぎてちょびっとしか飲まない。結局、次のエイドまで水のことで頭がいっぱいだった。


途中10人規模のトレインに巻き込まれようとしてたので早めに離れて一人旅。

無我夢中で登って、瑠璃山山頂1748m。


夜の23時過ぎ、稜線は風が強く寒い。

辺りは真っ暗、でもガスっているのは分かる。


ゆっくりしてると低体温症になりそうだったので、休むことなく下山開始。

下山ルートがスキー場みたいにストレートだったので膝にダメージ。ツラかった。


この辺りから異常な眠気が発生。

そりゃそうだ、もうすぐ40時間弱起きてる。しかも30時間近く動きっぱなし。

幻覚幻聴を見聞きするようになった。


エイドステーションが見えたと思ったら単なる森。

登山道の脇にある、一休み用の木製テーブル&イスに、外国人のおじいさんとおばあさんが座って食事をしていた。その横でロッキングチェアに揺られている赤ん坊がいて、一点を見つめていた。木の陰に人が立っていたり(近くに行くと消える)

怖かった。


水も尽きかけて、ヘロヘロになりながら最後のエイドへ到着。



「~163km(ゴール)」

最後のエイドでコーラとか水とか、とにかく水気のあるモノを口に含んだ。

水の大切さを噛みしめながらガブ飲み。

トレランに必要な栄養素を含んだ人気青汁(通販で900円くらい/6包)が沢山置いてあって、サポーターの方が「いっぱい持っていってくださいね」と言ってくれた。

いっぱいもらって帰ろうと思って手を伸ばしたけど、プライドが邪魔をして2包しか掴まなかった。もう数包もらっておけばと、どうでもいい後悔。

最後の12kmに入った。


エイド出発時刻が0時30分、ゴールの最終は3時30分。残り12kmで3時間。

元気な状態の自分なら、1時間以内で走れる距離なので完全に気が抜けた。

ちょっと走ったらすぐ歩く。

ゴールまでに30~40人に抜かれたかな。

もう順位とか時間とかどうでもいいや的な感じになっていたので、トボトボ歩く。


追い抜いていく他のランナーの方から励ましの声が届く。

自分もツラいのに優しくて良い人ばかりだな。


ただ眠気Max+足膝限界+メンタル的にもう走りたくないため走れない。

幻覚もMax、5回建てのアパートが下から音もなく立ち上がって消えていく。

下の葉っぱが、ハロウィンのかぼちゃみたいにみんな笑ってる。

後ろには誰もいないのに、足音が永遠と一緒についてくる。

でももう慣れたので恐怖感はない。

とにかく最後の数キロが異常に長い。


何気に走り出したら、足元に中々のデカい石が転がっているのを見落としていて、ノーガードで左足 中指がぶつかった。

メッチャ痛くて眠気が吹っ飛んだが、また眠気が襲ってきて、再び同じぐらいの石に全く同じ箇所をぶつける。今度はもっと痛かった。

(後日、そこは爪が剥がれることになる、3週間ほど指先痺れも発生)


そんなこんなでフラフラ歩いたり走ったり、結局たったの12kmで2時間30分もかけた。

(あと、途中 熱中症にかかりました)


最後のながーい下りを終えると、急に視界が開けて明かりが見える。

ゴール前には夜中の3時だというのに人がいっぱい。

自分にナイスランの掛け声をくれる。


実はゴールの瞬間が一番緊張する。

どんなポーズで、表情でゴールするのがいいのか毎回分からない。


今回も迷いながら行ったら、結局ひきつった笑顔でゴール。

まあ自分らしい。


帰りのバス、車を停めてある場所まで1時間ちょっとの時間、席に座って目を閉じたら3秒で着いた。


初めての100マイルだったので、感傷に浸りながら書きました。

トライアスロンのロングを含めても、今まででダントツ厳しいレースでした。

本気で何度も何度もリタイアを考えたけど、終わってみれば楽しい思い出のような気がします。


次のレースはUTMF 100マイル(名称変わってMt.FUJI 100)か、川の道フットレース250km。どちらも抽選に通ればだけど。


もう少ししたら、今年の7月 TJARをにらんで行った南アルプス 仙丈ケ岳の旅も書きたいと思います。


以上

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